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夏の盛りに、その小さな本の誕生を知った。

取り寄せた。

句集「羽音」。 著者:麻香田みあ。 発行所::ふらんす堂。


「序」として置かれているのは、著者の所属する俳句の会を主催される方の、言葉。

   八月や胸をつらぬく放射線

去年の「円座」誌に、著者が提出した十句の、巻頭の一句であると。

「なんと衝撃的な句だろう」。「つらぬく」という言葉が、文字通り読み手の胸をえぐる」。とも。

主催者・武藤紀子氏は、そして、かつてのことであるが、として、ご自身が癌の手術の際、手術前の検査の折にも、繰り返し(レントゲン検査で)放射線を浴びた、こんなに浴びて大丈夫だろうか、と心配したものだ、と、記されている。

一句の季語は「八月」。八月と聞けば原爆をイメージする。してしまう。私には、そうだ。多くの方々にもそうだろう。

原爆でなくても、いまこの時代、多くの女性がこの「胸をつらぬく放射線」のイメージを、心中に秘めておられるだろう。


武藤氏が言い切っておられないように、一人の読み手である私にも、みあさん(こう呼ばせていただく)の一句の「胸をつらぬく放射線」が、実は何をさしているかは分からない。ぜんぶ含んで、のことかも知れない。

分からなくてもいいのだ、それは。ただ、十七音に出会い、胸に、ずどんと大きなものを撃ち込まれた、それでいいのだ、と思う。私は、だらだらと短歌を続けて来て、止められなくて、いまもうたを詠む。うたにしか託せない思いが、自分の中に湧くのだと思う。で、俳句に関してはもの知らずと思う。解っている。

もの知らずでも、読んで、あ、と、胸を押さえてしばし、ということがある。悲しみや切なさや、どうしようもなさや、何にとも無い怒りや。それでいいではないか、と、思う。それでいい。感じればいい。

麻香田みあ さんの、八年間の句作の中から選ばれたという作品群には、自選の十句が示されている。それをまずご紹介するのがスジかな、と、けっこう真剣に考えた。で。そうでなく(私のへそ曲がりの故でなく、そうしたくて)。

数をいわず、自分が「いいな」と感じ、再び戻ってまた「いいなあ」と感じた作品を、列挙させていただくことにした。


  大樹から一直線に夏つばめ

  楡の木に風の生まるる五月かな

  春の雪生木を裂いてしまひけり

  基督に釘の大きな踏絵かな

  水重く押しあふ港春浅し

  誘惑はぶらさがるもの黒葡萄

  大鷲の胸ひろやかに風を切る

  飛込に水面すばやくとぢにけり

  一人呑みまた一人呑み踊の輪

  ひとすくひ土産にしたき虫の闇

  依るもののなくて花野に独り立つ

  八月や胸をつらぬく放射線

  焚火果て見知らぬ人にもどりけり

  灯を消して招き入れたる春の闇

  内裏雛互ひの貌を知らぬまま


・・何度か句集を読み返して引かせてもらった、もっと沢山ある。一番初めに「あ」と立ち止まった一句は

  直立が葦の本領枯れてなほ


これだった。今も、いいなあ、と。葦って、「風にそよぐ」と詠まれること多い植物。考える葦、とか、それは置いておいて。

その葦は、直立が「本領」である、と。俳句独特の言い切り方。続けて「枯れてなほ」と。

強い方なんだなあ、と感じる。同時に、当たり前に強くいられる時でなく、精いっぱいに、本当はよろけたいときに、よろけても許されそうな時に、現実には、よろけてしまっている時に。この一句は、詠まれたのだと、感じて、同年代の(そうなのです)胸が軋んだ、痛んだのでありました。

  輪に入りて踊ればいつかかの世にて

淋し過ぎるよ。

  月皓と帰るべきとき近づきぬ

この一句が、句集の最後の一句。ご本人も、自選のなかに入れておられる。

くだくだしくは申しますまい。心中の決意、覚悟を詠まれたのか。


・・・実を言えば、私は、自分の「みんなのうた」なる「うた詠みましょう会」を続けるに於いて、自分なりのやり方のようなものを、ヘタレな胸の内に抱いている。

幾つかある、その一つは、私から呼びかけることはするまい、であって。理解していただけるかどうか、責任を持てないといけないから。申し訳ないし、うまく行かない時に、自分「が」痛いから。

どのどなたも、おいで下されば嬉しい、一緒にうたを楽しみましょう。が基本で、途中から「よろしければ、少し触れさせていただき申す」となって来て、今に至る。今まで、あれやこれやとして来た結果が、そういうこと。

なのだけれど、この方に、呼びかけてしまった。端的に言えば「いてはりますかぁ、いてはるんやったら、お返事くれはったら安心ですねんけど~~~」という感じで。

他のお方にも、実は、お呼びかけしたい。そういうお方は、何人もおられる。でも・・・で、ごめんなさいね、と、ここで、言いたがっている訳なのです。

・・麻香田みあさんは、こちらお休み中、句集を編むのに集中しておられたようで、そう伺って、ああ、よかった、と、深く安心した次第なのでした。

ここまで読んで下さって、ありがとうございました。で。うふふ、と、何か、お感じになられませんでしたか。

決然と。凛然と、自らの「si」に立ち向かって

  直立が葦の本領枯れてなほ

と詠まれる、この女性が、いたずらっ子みたいな仕掛けをされていること。

麻香田みあ。まかだみあ。マカダミア。わはは、と笑って、し慣れない「書評」の最後とさせていただきます。

書きたいように書かせていただきました。麻香田みあさん。KUONの部屋では「かりそめ」さん。失礼がございましたら、お許し下さい。もう、書いちゃったからね。

持病と寿命は、まったくの別物。

次の句集の感想も、書かせて下さい。何年か先でいいです。お待ちしています。


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2018.09.23 Comment:12
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