睦月のおべんきょう Ⅱ
まめはな
・弱りたるとき確実に留め刺しし人なれど母恋して止まず
苦しい記憶を、懸命に詠んでおられます。いちばん傍にいて欲しい時なのに、その人はそんな時、きっちりととどめを刺す人だった。でも、そんな人なのに、そんな母なのに、母が、恋しい。
「弱りたるとき確実に留め刺しし人なれどなれど母の恋しき」
「~人なれど母かくまで恋し」「~人なれど母ただに恋しも」
元のうたで充分お気持ちは表わされていますが、もっと、恋しい、恋しい、と、訴えられても、と思ったのです。かえって失礼だったかも。でも、こういう歌は、ぐわーっと叫んでしまっても、いいのですよと、私は、師に、いたわっていただいたのでした。
・そとわれは敵(かたき)なりしと言いし母びっくりしたよ好きだったから
これはないよね、お母さん。もっと吐き出して下さい、いっしょに痛みます。よく、ぐれないで、素直なままのまめはなさんで来られましたね。私は年上なので、えらかったねと、エラそーに、お褒めします・・こういう母子関係、あるんですよね・・。
・我が病無邪気に笑いし人ありき貴女はさぞや健康でしょう
こういう風に、ぶったぎってもいいと思います。吐き出しちゃえ!。
黒猫アビ
・新年を迎える準備 夫婦して
子の笑み浮かべおせちの用意
穏やかな光景ですね。このままでいいのですが、厳密にうたの形を求めるなら「おせち用意す」とか「おせちの用意す」になります。あくまで、基本の考え方なので、元のままで充分です。
・年越しを家族集まり時を待つ
除夜の鐘鳴り「おめでとう」の声
熱心に皆勤で、うたの調べも言葉の選択も、よくなられました(エラソでごめんです)。もう少しゆったりした感じを出してみると
「家族みなそろいて時を待ちおれば除夜の鐘鳴る新年明けぬ」・・「おめでとう」でもいいのですけどね。
・お正月箱根駅伝楽しみに
山を駆け抜く選手の雄姿
・年賀状初めて涙こぼれ落ち
亡き友の夫 年賀の文に
思いはよく出ておられますが、それを明確にしたい・・今年初めての涙ですか?亡くなった友の、夫さんからの年賀状に?
「この年の初めての涙こぼれ落つ亡き友の夫の年賀の文に」
こうですか? ちがってたらごめんなさい。
・亡き友の夫から届く年賀状
早や二十年の歳月流れる
おせち料理もいつまでできるか?心配もあるけど
なんとか家族全員で祝うことができホットいたしました。
若くして(48歳)逝った親友のご主人様から
お互い住所が変わっても年賀状は不思議と続いて
おります。当時は50歳と若く再婚されていたら
申し訳ないと思いつつ・・・。
かりそめ
*泡のごと廃業したるマリーナは杭のみ残り鴎集へり
泡のごと、とあるのは、そういう成り立ち、経緯だったのか・・白い鴎の色が際立って。
*乾杯のあとの時間の長かりし呑めぬ身とては食べるほかなし
でへ。同族です。
*越後より米取り寄せて搗きし餅五切れ貰へり旨かりしかな
「五切れ」が効いています。数ばかり気にしているようですが、三でもない七でもないのが、いいんです。
*お飾りに笑門の文字大きくてまづは笑ふがよかりけるらし
*札(さつ)なれば賽銭箱は音立てず覚束なさに硬貨も入るる
わかる~、って一首です。
*木の椀の七草粥を啜りつつ行事ゆかしき国を愛せり
七草がゆを「三草」で済ませた自分が、恥ずかしく・・・木の椀、も丁寧です。
*年経たる管理事務所の北側に水仙二輪傾ぎて咲きぬ
傾ぎて、が眼目。私が申すまでも無いですね、よく見て、さりげなく描写する、の原点のような。
*犬猫の飼へぬマンション階段を犬ふところに登りてきたる
わがマンションでも、今朝、そういえば。
*会ひてすぐ「今日の私は違ふでしょ?」ウィッグ指差す友の笑顔よ
最後の「よ」が、いろんな意味を。もしかして病友さんか。
白萩
定まらぬ元号の年明けにけり 明星の光は変わらねど
[元旦の夜明け前に]
コーヒーを携え拝む初日の出君を我を茜色に染(そ)む
こういう初日の出を待つのうた、初めて拝見しました。なんとなく、いいな・・・
友達と 家族と もしくは恋人と 海岸に並び観る初日の出
「もしくは」の言葉の置き方に、なんとなく含みがあって。と、感じました。黙って、すこし横目で、見ておられるのかな。
ニューイヤー 箱根 と続く駅伝の面白さ分かる歳になりにけり
霜柱踏むことなきアスファルト道少し寂しき冬の足元
これ、まさに白萩さんのうた、ですね。そう感じたのです。そういえば、長く、霜柱を踏んでいません、私。
山茶花の咲く庭今はなく人の庭の山茶花愛で祖母思う
[亡き祖母の命日に]
一読、つっかえてしまい、三度目くらいに、詠み人さんの意図的なものかどうか、不思議な進みようの一首とわかり。破調のごとしなれども、ぴたりと定型におさまっている。うたを詠むことが身に添っておられると、こいう不思議な(素敵な)調べが、と、目がぱっちりと開きましたよ。
かげろう
久し振りに投稿いたします。
おひさしぶり、嬉しいですよ。
・寒風のもとに咲きたる薔薇一つうつむきたれども落ちずゆれをり
この「薔薇一つ「」、はじめ一輪かな、と感じたのですが、いや、一つ、とぶっきらぼうな感じが、ここにはふさわしいと思いなおしました。愛おしい薔薇の姿。
・さえわたる天に星々またたきて大三角はまさに君臨す
冬の大三角ですね。雄大な一首。
・かなうまい昭和平成生き抜いて勁くまた彊し祖母母伯母も
そして、強くまたふところ深いであろう日本のをんな、皆さまに、来るべき平成の後の世が、どうぞ、どうぞ、佳きものでありますように。そうであらねばなりません。その血を引いて、うた詠む作者も…
・初詣社の背戸をみあぐれば五年前の傷跡哀し
「その」傷跡は、「哀し」と詠まれる過去を背負っているのか。背戸そのものと読んで、これなりの形にはなっているのですが、五年前と明記してもありますので、もう少し情報が欲しいな、との思いが涌きます。何の傷跡なのか、と。