追憶・・風が吹いていた
コメントをたまひぬ。情、熱きとも読み得るコメントなりし。
〇 一夜漬け
「もうやめたら?
確かにKUONさんの苛立ちは分かります。でも、もうやめたら?どんなにキライな人でも、ここまで長い悪口は読んでて不愉快になります。書き連ねることでご自身を貶めるのは見てて辛いです。」
2019/04/11 (Thu) 16:29 EDITREPLY
・・・に応えて。




ハンドルネームKUON・万里小路白燁 返す
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バイコ。
あの年、あの日、マルはバイコを背に負って、嬉しそうにカメラの前に立ったのだった。
お天気のいい日だった。父親の背中でバイコは、上機嫌だった。ぱつぱつに膨らんだ頬。帽子の隙からはみ出している髪は真っ黒、かすかなウエ~ブのかかった健康そうな髪だった。
バイコは牛を見て喜んだ。農場だった。くびれの深く入った可愛い手を振った。牛に触れようとした。カメラマンの中から好意的な笑い声が漏れた。雑子は二人の傍にいて、二人と同じように笑っていた。
こういうのが幸せというのか。マルにとってはそうだっただろう。自分の子を、おんぶして、人前に出る。おそらくそんなことが、マルの望む幸せだった。長く望んだ、憧れた「夢」だった。みんなみたいに。弟の家みたいに。それはわかった。雑子自身、そういった気持ちは、自分の中身のどこかに潜んでいた、ような、気がした。
バイコの喃語が響き、そよそよと風が吹いていた。あー、っとバイコの嬉しそうな声が、空に向かってまっ直線だった。
夫・・丸臣が雑子を見た、笑っていた、雑子も笑い返した。
遠い日の、本当にあった、記憶に残る、一日。
あの日、バイコは、自分の娘だった。雑子の産んだ娘だった。
あの日は。あの頃は。そして。