プリンセスじゃない。
2019年04月17日 公開
唐突なる復元 : 「ジャムのかなしみ」
イメージ短歌
うでいっぱいタオル取り入れたたみ終へ露西亜紅茶(ロシアン・ティ)のジャムの明るさ
「戯作者」あるいは「テヘもの書き」、何茶手くおんの詠める
プロロオグ
毎日お日さまが昇り、お日さまが沈みます。ペンキの剥げた木椅子に掛けて、暮れて行く空を見ている時、わたしは、天動説を信じる人になっているようです。
地球と呼ばれる星。宇宙の闇に浮かぶ青く美しい水の星。その地球そのままを何もかもそっくりにマネっこしているような、知られざる星があります。
おきゅう。それが、その星の名です。
この小さな物語は、ちっちゃい☆「おきゅう」の、のっぽん、なる国、地球と同じく四季の彩りに恵まれ、真面目で嘘の無い生き方を「よし」とする人びとが生きる国の、ある時、ある日のある時間帯に発生した悲劇 (え?) をもとに、「テヘもの書き」と(局地的に)さげすまれる、おきゅう人「くおん」が、テヘテヘとつづった、何の役にも立たない物語にてございます。
もうもう、この国の皇后を筆頭とする極め稀なる、神を畏れざる俗物集団の醜状になど、ふれることにイヤケがさしてしまっております。五月とならばいま以上の事態にならんこと必定。幾とせの余も以前に書いたものを引っ張り出して参りました。
四月いっぱいにて、まこと「皇室に関する話題は卒業、終了」の夢を描いております。。。ちょっとエラそーね、ここ。KUON勝手にあっち行け、とか、ぢつはそれだけのことなのよね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いつもより早く、天井の明かりが、いっせいに灯りました。
ジャムは驚いて、まだまどろんでいた目を開けました。やはり明るい。どうしたのかしら。周囲を見回してみました。
みな、大人な顔して黙っています。何かを伝えられていて、今日が昨日とは違うのだと悟っている様子です。
ジャムはまだ、生まれてそんなにたっていない幼いジャムです。ここへ来たのも、何日か前のこと。箱に詰められて運ばれて、箱が開いて動かされて、今いるこの、棚に置かれました。
何となくわかったことでは、ここは、とうと、という大きな町で、そのとうとの中でもいちばん立派なデパート、というところの、地下、らしい。
お日さまがちっとも照っていません。電気と言うものが灯っている。灯っている間は、お客さんと言うひとたちが、歩き回っていて、立ち止まってジャムの置かれている棚を、指で数えるみたいにとんとんしたり、んん~と考えてから一つ、手に取ったり、戻したり、また違う人が来たり。
手に取った人を見上げる子どもが、ものすごくキャキャと笑ったり嬉しそうにぴょんと跳ねたりします。
そして
昨日も新しいジャムが来ました。青紫の色のジャムです。ちょっとだけ背が高い。きょろきょろと不安そうなジャムに、ジャムは、ここはデパートと言うところで・・・と、教えてあげました。教えてすぐにそのジャムは、買われて行きました。ここにいるのが「いい」のか、どこかへ買われて行くのが「いい」のか。ジャムにはわかりません。
「このジャムは、本当に美味しくて。とうとではここにしか無いので、幾つも買って帰りたいのですけど、重いし、店の方でも一度に沢山買われることを喜ばないみたいでね」
そんなことを横にいる人に話しながら、通って行くおくさまもいます。
ジャムにはよくは見分けがつかないのですが、女の人のお客さんで、若い娘さんでない人の中には、おくさまやおばちゃんや、おばさまや、が、いるそうなのです。
世の中はむずかしい、と、ジャムは思います。こんなのジャムの値段じゃないわよ。叱りつけるみたいに言って、ぽーんと、放るみたいに棚に戻した人もいました。なんだかわからないけどジャムは、ごめんなさい、なのかなあ、と、考えたりしました。
ジャムが生まれて育ったところは、にこり、という、とうとからは遠い、海に囲まれた温かい土地です。
海を見下ろす小高い山の上に、ジャムの樹は立っていました。
ジャムの樹の周りには、やはり、みたんという果物の樹が沢山、立っていました。
ジャムは、この「みたん」という太陽みたいな色をした果物を、煮て、作られたのです。
ジャムの樹の上を、気持ちのいい風が、吹き過ぎて行きました。
太陽は、ぽかぽかと、にこにこと、ジャムの樹を温めてくれました。
時には雨がたっぷり降って、ジャムの樹は、力いっぱい根っこから水を吸い上げるのでした。
肥料という物を、施されることもありました。
ジャムの樹の持ち主は、季節になると、少しだけ薬を使いました。よおく考えて、使うのだと、聞きました。
全く薬を使わないでは美味しいみたんを育てられないんだよ、と、おじさんは言っていました。どうしても要るだけはクスリも使わないと、いいものはできない。
風と、太陽と、水と、肥料に育てられて、みたんの樹は輝く果実をいっぱい、つけました。
おじさんや、おばさんが、ひとつずつ果実を捥いで、籠に入れて、持って帰って、大事そうに柔らかく洗って、そして、お砂糖のほかはいろんなものを混ぜこまれないでジャムは、丸い、皮に守られていたみたんから、瓶に詰められたジャムになったのです。
みたんのジャムって、けっこうありそうで無いのよ。おじさんの娘さんで、お嫁に行ってそこで赤ちゃんを産んで、もう一人産んでまた産んで、その間もずっと、みたんをジャムにする作業をしに通って来ていた人が、言っていました。
オレンジのジャムはあるんだけどね。
ジャムは、自分が、あまり無いジャムなのだと聞いて、嬉しかった覚えがあります。
それを聞いてすぐ、透明の瓶を白い柔らかいものに包まれて、箱に入れられて、しずくの町から、出て来ました。
とうとの、この大きなデパートへ、送りだされて来たのでした。
一緒に来て先に買われて行ったジャムは、ちゃんと、食べられたかなあ。
夜、少し眠りにつけない時は(これは大人っぽい言い方で、ジャムは気にいっているの)、ふるさとのことを思いだしたりもしました。
美味しく食べてもらいなさいね。
お嫁に行って子どもを産んで、ぽちゃぽちゃのアカンボを育てながら、みたんを煮に来ていた娘さんは、ジャムに、そう言葉をかけました。
赤ちゃんも病人も、美味しくてにっこにこになるジャムなのよこれは。
娘さんは、自分たちの小さな工房で作るジャムが、大好きなのだって。自慢なのだって。
・・・自分も、美味しく食べてもらえるといいなあ。
ジャムの、透明な夢は、それでした。
・・・いつもより早く灯された店内には、やはり、いつもとは違ったことが起こるようでした。
女の人・・・おくさんやおばさまやおばちゃんや若い女の人も多いいつもと違って、同じ黒っぽい服を着てネクタイを締めて、まっすぐに口を結んだ固そうな体の男の人たちが、まとまって入って来て、たたっと散りました。
SPだ。
渋い味の声がしました。棚のじいさん、です。もうずっと、このジャムやママレード売り場にいる、ちょーろー、なんて呼ばれている、物知りの棚です。
「やはり、ザツコたちが来るんだな」
「ザツコ?フー?」
向こうの方から、外国から来ていると言うマシュマロの声がしました。
中くらいの苦みの声が、
「こーたいしロのよめさんだよ」
と言うのが聞こえました。
フーズ、ハー? とかの声も聞こえました。もにゅもにょと何かがそれに答え、
「プリンセス?」
と驚く声がして、
いいや。
しっかりと落ち着いた、棚のじいさん=ちょーろーの声が、どしっと、皆のざわざわを抑えるように響きました。
プリンセスではない。しっかりとした声でした。
「自分にはわかっていないんだ、あれらは。。雑子は外国の王族とはまったく違う。神を司る家の長男のところへ送り込まれて来た、第二段目の破壊者なんだよ。だけど、何もわかっちゃいない。不服顔して威張っているだけの」
ちょーろーは、一層声を強めました。
「異教徒だ。現在のこーごーはアーメンタル、今の雑子は、欧州ではカルト認定されている、あの」
ええ、とどこかからの声が響き、もしや、いくらなんでも、とざわめきが起こりました。
「あいつは、ろくでなしだ」
はっきりとした声でした。ジャムはびっくりしました。
「あいつら一家は、本物の、ろくでなしだ。ちゃあんと解っている。食べ物も人々も何もかもを粗末にし、敬意をもって向かわない、とんでもないろくでなしだよ」
時々、来やがるんだ。チョーローは言い放ち、
「ほうら来たぞ、みんな、見ておくんだ。」
声を沈めました。
緊張してジャムは、ほうら、と言われたものの来る方を、見ました。
・・・来ました。
男の人と女の人と、それから、子ども。
男の人は右見てうんうん、左見てハイハイ、一人で、口を「いー」みたいにつむって、いやそれはいいんですけど、あの、女の人は。
女の人でしょう、きっと、髪長いし、お化粧してるし、でも、あの人は、
おくさんか、おばさまか、おばちゃんなのか。眉毛は、見ると、おじちゃんみたい。
う~ん解らないわ。ジャムは、どきどきしました。
続きます・・・おそらく。話、飛ぶかも知れませんが。
イメージ短歌
うでいっぱいタオル取り入れたたみ終へ露西亜紅茶(ロシアン・ティ)のジャムの明るさ
「戯作者」あるいは「テヘもの書き」、何茶手くおんの詠める
プロロオグ
毎日お日さまが昇り、お日さまが沈みます。ペンキの剥げた木椅子に掛けて、暮れて行く空を見ている時、わたしは、天動説を信じる人になっているようです。
地球と呼ばれる星。宇宙の闇に浮かぶ青く美しい水の星。その地球そのままを何もかもそっくりにマネっこしているような、知られざる星があります。
おきゅう。それが、その星の名です。
この小さな物語は、ちっちゃい☆「おきゅう」の、のっぽん、なる国、地球と同じく四季の彩りに恵まれ、真面目で嘘の無い生き方を「よし」とする人びとが生きる国の、ある時、ある日のある時間帯に発生した悲劇 (え?) をもとに、「テヘもの書き」と(局地的に)さげすまれる、おきゅう人「くおん」が、テヘテヘとつづった、何の役にも立たない物語にてございます。
もうもう、この国の皇后を筆頭とする極め稀なる、神を畏れざる俗物集団の醜状になど、ふれることにイヤケがさしてしまっております。五月とならばいま以上の事態にならんこと必定。幾とせの余も以前に書いたものを引っ張り出して参りました。
四月いっぱいにて、まこと「皇室に関する話題は卒業、終了」の夢を描いております。。。ちょっとエラそーね、ここ。KUON勝手にあっち行け、とか、ぢつはそれだけのことなのよね。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
いつもより早く、天井の明かりが、いっせいに灯りました。
ジャムは驚いて、まだまどろんでいた目を開けました。やはり明るい。どうしたのかしら。周囲を見回してみました。
みな、大人な顔して黙っています。何かを伝えられていて、今日が昨日とは違うのだと悟っている様子です。
ジャムはまだ、生まれてそんなにたっていない幼いジャムです。ここへ来たのも、何日か前のこと。箱に詰められて運ばれて、箱が開いて動かされて、今いるこの、棚に置かれました。
何となくわかったことでは、ここは、とうと、という大きな町で、そのとうとの中でもいちばん立派なデパート、というところの、地下、らしい。
お日さまがちっとも照っていません。電気と言うものが灯っている。灯っている間は、お客さんと言うひとたちが、歩き回っていて、立ち止まってジャムの置かれている棚を、指で数えるみたいにとんとんしたり、んん~と考えてから一つ、手に取ったり、戻したり、また違う人が来たり。
手に取った人を見上げる子どもが、ものすごくキャキャと笑ったり嬉しそうにぴょんと跳ねたりします。
そして
昨日も新しいジャムが来ました。青紫の色のジャムです。ちょっとだけ背が高い。きょろきょろと不安そうなジャムに、ジャムは、ここはデパートと言うところで・・・と、教えてあげました。教えてすぐにそのジャムは、買われて行きました。ここにいるのが「いい」のか、どこかへ買われて行くのが「いい」のか。ジャムにはわかりません。
「このジャムは、本当に美味しくて。とうとではここにしか無いので、幾つも買って帰りたいのですけど、重いし、店の方でも一度に沢山買われることを喜ばないみたいでね」
そんなことを横にいる人に話しながら、通って行くおくさまもいます。
ジャムにはよくは見分けがつかないのですが、女の人のお客さんで、若い娘さんでない人の中には、おくさまやおばちゃんや、おばさまや、が、いるそうなのです。
世の中はむずかしい、と、ジャムは思います。こんなのジャムの値段じゃないわよ。叱りつけるみたいに言って、ぽーんと、放るみたいに棚に戻した人もいました。なんだかわからないけどジャムは、ごめんなさい、なのかなあ、と、考えたりしました。
ジャムが生まれて育ったところは、にこり、という、とうとからは遠い、海に囲まれた温かい土地です。
海を見下ろす小高い山の上に、ジャムの樹は立っていました。
ジャムの樹の周りには、やはり、みたんという果物の樹が沢山、立っていました。
ジャムは、この「みたん」という太陽みたいな色をした果物を、煮て、作られたのです。
ジャムの樹の上を、気持ちのいい風が、吹き過ぎて行きました。
太陽は、ぽかぽかと、にこにこと、ジャムの樹を温めてくれました。
時には雨がたっぷり降って、ジャムの樹は、力いっぱい根っこから水を吸い上げるのでした。
肥料という物を、施されることもありました。
ジャムの樹の持ち主は、季節になると、少しだけ薬を使いました。よおく考えて、使うのだと、聞きました。
全く薬を使わないでは美味しいみたんを育てられないんだよ、と、おじさんは言っていました。どうしても要るだけはクスリも使わないと、いいものはできない。
風と、太陽と、水と、肥料に育てられて、みたんの樹は輝く果実をいっぱい、つけました。
おじさんや、おばさんが、ひとつずつ果実を捥いで、籠に入れて、持って帰って、大事そうに柔らかく洗って、そして、お砂糖のほかはいろんなものを混ぜこまれないでジャムは、丸い、皮に守られていたみたんから、瓶に詰められたジャムになったのです。
みたんのジャムって、けっこうありそうで無いのよ。おじさんの娘さんで、お嫁に行ってそこで赤ちゃんを産んで、もう一人産んでまた産んで、その間もずっと、みたんをジャムにする作業をしに通って来ていた人が、言っていました。
オレンジのジャムはあるんだけどね。
ジャムは、自分が、あまり無いジャムなのだと聞いて、嬉しかった覚えがあります。
それを聞いてすぐ、透明の瓶を白い柔らかいものに包まれて、箱に入れられて、しずくの町から、出て来ました。
とうとの、この大きなデパートへ、送りだされて来たのでした。
一緒に来て先に買われて行ったジャムは、ちゃんと、食べられたかなあ。
夜、少し眠りにつけない時は(これは大人っぽい言い方で、ジャムは気にいっているの)、ふるさとのことを思いだしたりもしました。
美味しく食べてもらいなさいね。
お嫁に行って子どもを産んで、ぽちゃぽちゃのアカンボを育てながら、みたんを煮に来ていた娘さんは、ジャムに、そう言葉をかけました。
赤ちゃんも病人も、美味しくてにっこにこになるジャムなのよこれは。
娘さんは、自分たちの小さな工房で作るジャムが、大好きなのだって。自慢なのだって。
・・・自分も、美味しく食べてもらえるといいなあ。
ジャムの、透明な夢は、それでした。
・・・いつもより早く灯された店内には、やはり、いつもとは違ったことが起こるようでした。
女の人・・・おくさんやおばさまやおばちゃんや若い女の人も多いいつもと違って、同じ黒っぽい服を着てネクタイを締めて、まっすぐに口を結んだ固そうな体の男の人たちが、まとまって入って来て、たたっと散りました。
SPだ。
渋い味の声がしました。棚のじいさん、です。もうずっと、このジャムやママレード売り場にいる、ちょーろー、なんて呼ばれている、物知りの棚です。
「やはり、ザツコたちが来るんだな」
「ザツコ?フー?」
向こうの方から、外国から来ていると言うマシュマロの声がしました。
中くらいの苦みの声が、
「こーたいしロのよめさんだよ」
と言うのが聞こえました。
フーズ、ハー? とかの声も聞こえました。もにゅもにょと何かがそれに答え、
「プリンセス?」
と驚く声がして、
いいや。
しっかりと落ち着いた、棚のじいさん=ちょーろーの声が、どしっと、皆のざわざわを抑えるように響きました。
プリンセスではない。しっかりとした声でした。
「自分にはわかっていないんだ、あれらは。。雑子は外国の王族とはまったく違う。神を司る家の長男のところへ送り込まれて来た、第二段目の破壊者なんだよ。だけど、何もわかっちゃいない。不服顔して威張っているだけの」
ちょーろーは、一層声を強めました。
「異教徒だ。現在のこーごーはアーメンタル、今の雑子は、欧州ではカルト認定されている、あの」
ええ、とどこかからの声が響き、もしや、いくらなんでも、とざわめきが起こりました。
「あいつは、ろくでなしだ」
はっきりとした声でした。ジャムはびっくりしました。
「あいつら一家は、本物の、ろくでなしだ。ちゃあんと解っている。食べ物も人々も何もかもを粗末にし、敬意をもって向かわない、とんでもないろくでなしだよ」
時々、来やがるんだ。チョーローは言い放ち、
「ほうら来たぞ、みんな、見ておくんだ。」
声を沈めました。
緊張してジャムは、ほうら、と言われたものの来る方を、見ました。
・・・来ました。
男の人と女の人と、それから、子ども。
男の人は右見てうんうん、左見てハイハイ、一人で、口を「いー」みたいにつむって、いやそれはいいんですけど、あの、女の人は。
女の人でしょう、きっと、髪長いし、お化粧してるし、でも、あの人は、
おくさんか、おばさまか、おばちゃんなのか。眉毛は、見ると、おじちゃんみたい。
う~ん解らないわ。ジャムは、どきどきしました。
続きます・・・おそらく。話、飛ぶかも知れませんが。
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