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2019-06-10 (Mon) 20:36

お聖さんの「柏木」


田辺聖子さんが亡くなった。

一時期、どんどこ、田辺さんの小説を読んだ。わたしは、カモカのおっちゃんのモデルであるという田辺さんの夫さんを、あまり好きではなかった。単に好みの問題。言いがかりのようだが、毛深くてごつい男性は、私にはコワいのだ。で、きっととても素敵な男性であったであろう夫さんとおせいさんが大活躍のシリーズには、手が伸びなかった。単体のお聖さんが、私には、よかった。

素敵なお洒落な小説を、たくさん書いておられた。年齢は二十歳ほども違う、戦争を知っておられる方だったが、大阪で「職業婦人」をしておられた田辺さんは、男女の情やなんか、とてもラジカルな面をたっぷりお持ちで、へええ、ほおお、と、幼い女の子を二人育てていた、短かった専業主婦の時期の私には、新鮮だった。小説の中の小物の取り扱いも素敵だった。

年下の、若いおのこを描くのがお得意だった気がする。

源氏物語は、どのへんに出て来る誰が好き、と言う話題で盛り上がるのも楽しい小説。カタクナに私は「六条御息所」が好き、と言い続けている。と同時に、「柏木」が好き、とも思い続けている。

「柏木」。頭中将(内大臣)の長男。「柏木」とは、王朝和歌における衛門府、衛門督の雅称である。光源氏の息子・夕霧の友人。源氏の妻・女三宮と密通し薫をもうけたことで源氏に睨まれ早逝する。
                                                                wikより


言うほど丁寧に、詳しく読み込んでいるわけではない。そう書いておいて、知ったかぶりに書かせてもらうと、源氏の君のごとくピッカピカの存在でない男、とはいえ十分に「イケて」る貴公子が、一人の女性への憧憬、焦恋、苦しさのなかでようやくに思いを叶えはしたけれど、それは、独り相撲。ほんのひと時のことであって。なにせ、女三宮は、光源氏の妻である女性。

バレたと苦しんで病を得て、早々と死んでしまった、柏木という若者。二十代だった。

「 今はとて燃えむ煙もむすぼほれ
   絶えぬ思ひのなほや残らむ」

田辺聖子さんが訳された「源氏物語」の、その、女三ノ宮と柏木のくだりの、柏木の死のあたりの描写を読んで。

田辺聖子が、柏木にかけた思いの、言葉の、なんともやさしげな数十行。

そこに魅かれて、何度も読んで、一人でいる昼間、ひっそりと涙をこぼした。(よく泣いていたのです、無難な涙)。

人がひとを、いとおしく思うこころの透明を、混濁を、感じていた。

柏木が、いのちを絶やすほどに恋した女性は、でも、光の君には、特別な女性でもなかった。そんなあたりの何とも言えなさも、田辺源氏で味わった。父・帝と同じ、自分の子でない男児を自分の妻が産んだ、という、巡り合わせの、業、と言えば簡単なのですね、おそらく。

柏木が残した「薫」君は、「源氏物語」の「宇治十帖」の主人公のひとり。 派手やかな性格でなく、からだから、とても良い薫りを発する。この薫が鬱々たる思いを抱えながら育つ間に、表向きの父親である光君は、決定的に、若さを失って行った。

・・・田辺さんは、一緒に呑み、食べ、笑い、話を重ねた、夫さんだったカワノさんのお子さんを何人も、学齢期の大変な時期から、
育てられた。お子さんがたそれぞれ、今は落ち着いてお暮らしのことなのだろう。

喪主は弟さんだと、新聞の記事にあった。

リボンやレースや愛するスヌーピーたちに囲まれて暮らし、亡くなったればその棺にも、リボンやレースや色とりどりの花々や、何より、いちばん愛したスヌーピーの「スヌー」も、一緒だった・・ことだろう。

さようなら、田辺聖子さん。素敵な作家でいらした。

ありがとうございました。





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最終更新日 : 2019-06-10

NoTitle * by アルジェリマン
大学時代から読みはじめて、
丁寧に暮らす女性の物語をたくさん読みました。
ほぼ読破したつもりです。
本に出てくる素敵な女性達のようにはなれなかったけれど、
今でもひとりを勇気付けてもらってる気がします。

管理人のみ閲覧できます * by -

田辺聖子さん * by 薔薇風呂
田辺聖子さん、
人生の大先輩と勝手に思って、大好きな方です。
初めて買ったのが、夜明けのさよなら。
しかも、文庫本でないやつ。
何故その本を買ったのか、しかも文庫本でないやつを、学生時代に...
覚えてないけど、改めて読んだら、ちょっと手が届かない所にある贅沢な世界を、体験させてくれたように感じた。
うたかた、いちごをつぶしながら、窓を開けますか、お目にかかれて満足です...等の文庫本を、次から次へと。
暮らしの手帳のエッセイも、好きでした。
最近は、殆ど読んでなかったのに、好きという感情は、色褪せぬまま残っていました。
ご冥福をお祈り致します。
(本当は、三本締めでお送りしたいような気もします)


NoTitle * by KUON
・アルジェリマンさん

本当に、夢中になって次々、読みました。実際の田辺聖子さんは、花や綺麗な刺繍のお洋服がお好きだったようですが、小説の中は別でしたね。媚びない女性たちがすてきでした。

ほぼ読破・・すごいなあ。私はけっこう、男性作家の世界にはまっていた後での、田辺聖子さんでした。

女性の、言うに言えない気持ちに、すすっと添ってくれるような。ジョゼ虎が好きで、映画になったのも観て、ツマブキ君の良さを知った気がして‥偽善者でなかったです、訃報に接して「文車日記」を再読したくなりました。いつも黒ばかり着ている私は、タカラヅカもぬいぐるみも、全く関心ない・・けど、聖子さんは、花や縫いぐるみに包まれて、旅立たれたのだと思うと。今日は私の誕生日でもあったので、出かけた時に、小さい花束、買って帰りました。ちょっとお供え。

・薔薇風呂さん

なんと豪奢な、薔薇風呂。なかなか現実に味わえないものの一つですが・・夢の一つでもありますね。色彩と香りが、なんとも素敵ですね。

田辺聖子さんは、日本のサガンになりたかったそうで。たくさん書かれました、サガンの書かなかったような世界にも入っておられました。

列挙された本たち、私も読んだ・・胸が、きゅんとなる、お話の数々。私もずっと遠ざかっていましたが、読み返したらやはり、きゅん、となるのではないでしょうか。


NoTitle * by KUON
・ヒミツの○○さん

お優しいお言葉、ありがとうございます。

嬉しかったです。今日も午前中は淡々と仕事をして、用があってでかけて、一人で、冷たいおそばと鰻をいただいて来ました。

花の大好きだった作家さん、なんとかここまで生き延びて来た自分、勝手に重ねて、彩あざやかな小さな花の束を買って帰って。淡い水色の胴太のガラスの花瓶に。

次の一年を、また、無事に幸せに迎えられたらな、と、ほんわかと考えていました。

ありがとうございました。

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NoTitle

大学時代から読みはじめて、
丁寧に暮らす女性の物語をたくさん読みました。
ほぼ読破したつもりです。
本に出てくる素敵な女性達のようにはなれなかったけれど、
今でもひとりを勇気付けてもらってる気がします。
2019-06-10-22:05 * アルジェリマン [ 返信 * 編集 ]

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2019-06-11-10:53 * - [ 返信 * 編集 ]

田辺聖子さん

田辺聖子さん、
人生の大先輩と勝手に思って、大好きな方です。
初めて買ったのが、夜明けのさよなら。
しかも、文庫本でないやつ。
何故その本を買ったのか、しかも文庫本でないやつを、学生時代に...
覚えてないけど、改めて読んだら、ちょっと手が届かない所にある贅沢な世界を、体験させてくれたように感じた。
うたかた、いちごをつぶしながら、窓を開けますか、お目にかかれて満足です...等の文庫本を、次から次へと。
暮らしの手帳のエッセイも、好きでした。
最近は、殆ど読んでなかったのに、好きという感情は、色褪せぬまま残っていました。
ご冥福をお祈り致します。
(本当は、三本締めでお送りしたいような気もします)

2019-06-11-12:45 * 薔薇風呂 [ 返信 * 編集 ]

今も夢見る NoTitle

・アルジェリマンさん

本当に、夢中になって次々、読みました。実際の田辺聖子さんは、花や綺麗な刺繍のお洋服がお好きだったようですが、小説の中は別でしたね。媚びない女性たちがすてきでした。

ほぼ読破・・すごいなあ。私はけっこう、男性作家の世界にはまっていた後での、田辺聖子さんでした。

女性の、言うに言えない気持ちに、すすっと添ってくれるような。ジョゼ虎が好きで、映画になったのも観て、ツマブキ君の良さを知った気がして‥偽善者でなかったです、訃報に接して「文車日記」を再読したくなりました。いつも黒ばかり着ている私は、タカラヅカもぬいぐるみも、全く関心ない・・けど、聖子さんは、花や縫いぐるみに包まれて、旅立たれたのだと思うと。今日は私の誕生日でもあったので、出かけた時に、小さい花束、買って帰りました。ちょっとお供え。

・薔薇風呂さん

なんと豪奢な、薔薇風呂。なかなか現実に味わえないものの一つですが・・夢の一つでもありますね。色彩と香りが、なんとも素敵ですね。

田辺聖子さんは、日本のサガンになりたかったそうで。たくさん書かれました、サガンの書かなかったような世界にも入っておられました。

列挙された本たち、私も読んだ・・胸が、きゅんとなる、お話の数々。私もずっと遠ざかっていましたが、読み返したらやはり、きゅん、となるのではないでしょうか。

2019-06-11-19:17 * KUON [ 返信 * 編集 ]

今も夢見る NoTitle

・ヒミツの○○さん

お優しいお言葉、ありがとうございます。

嬉しかったです。今日も午前中は淡々と仕事をして、用があってでかけて、一人で、冷たいおそばと鰻をいただいて来ました。

花の大好きだった作家さん、なんとかここまで生き延びて来た自分、勝手に重ねて、彩あざやかな小さな花の束を買って帰って。淡い水色の胴太のガラスの花瓶に。

次の一年を、また、無事に幸せに迎えられたらな、と、ほんわかと考えていました。

ありがとうございました。
2019-06-11-19:25 * KUON [ 返信 * 編集 ]