師走のおべんきょ Ⅰ
詠み人さんのお名前。詠草です。詠み人さんからのメッセージ、詞書、など。KUONが書いている部分です。
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アルジェリマン
見上げれば残照の空 捕獲器のイタチ静かに空へ渡りき
表記のままでまったく問題ないのですが、「見上げれば」。→「見上ぐれば」。と言ってもいい。二つ、声に出して感じ比べてみて下さい。・・・そうですか。イタチは空へ。あのテの動物の、目は、とっても可愛いと思いはしますけど・・。
身ひとつで駆け上がるとふ坂道の果てにひと刷け赤き残照
今の言葉で詠んでおられるので、「駆け上がるとふ」の「とふ」は、正確には「とう」になります。なんか納得できない、とふ、がいいのに、と思いますけどね。
「ひと恋ふは かなしきものと」とうたう「平城山(ならやま)」のなかに「いにしへも つまを恋ひつつ 越へしとふ」なる一節があり、ここの「とふ」の素敵さが忘れられない。
「ひと刷け赤き残照」いいですね。
彼方より夕陽目を射る川光る 泳ぎ渡るるヌートリアの影
「夕陽目を射る川光る」このたたみかけは成功しています。「泳ぎ渡るる」う~ん。お気持と離れるかも、ですが、「泳ぎて渡る」あるいは「泳ぎ渡れる」ではないかなあ。こんな光景を、ご覧になっているのですね。すっげえ。
姿良し窓辺の黒猫 金色の鈴か瞳か夕陽に光る
鳴き声に見上げる屋根にアオサギの影飛び立ちぬ 三日月淡し
三日月の前の余白が効いています。黒猫も美しい。
日だまりの黒猫見やり立ち止まる マフラーの老人帽子を直す
黒猫とあいさつ交わし老人は小春のどけき町を歩みつ
なかなかお洒落な「老人」さん。マフラーも帽子も、長年愛用の上質のもののように思います。「小春のどけき町を歩みつ」・・・この「歩みつ」。多くの方々がこう書かれますが、間違ってるです。「歩みつ」は「歩いた」ということ、歩みつつ、とは異なるし、この一首の納めの言葉となれば「歩いている」の「歩める」か、お気持とは離れるでしょうが「歩みぬ」とやるか。
縦縞のマフラー長めに一巻きし帽子に手をやり道渡る人
大英帝国っぽい爺さんだなあ。あ、失礼。
水色のコートの襟にはチンチラの 小さき老女の杖は花柄
この小さな老女さんも、おしゃれ。チンチラの襟巻も、むかしのものでしょう。よくお似合いなのだと思います。トシとるのは当たり前のことですが、こんな風なら、いいなあ。水色。花柄。
金の服真珠のブローチ首飾り あの諺の描写通りで

金色のスーツの皺の醸し出す 肉とワインの怠惰な暮らし
今夜はこれにて失礼いたします。