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霜月の「みんなのうた」



     アルジェリマン の詠める

切り詰めたハイビスカスにまたつぼみ四十雀鳴き窓越しに聞く

午後の陽を浴びて黒犬すやすやと蝶の飛ぶ影映る庭先

樫の木を確かめるごと寄り集うアシナガバチの翅(はね)透けて見ゆ

秋の蜂明日の冷え込み知らぬげに午後の陽浴びて生きてあるなり

黒塀に赤い実映えて艶姿うろこ雲満ち明日は雨なり

うろこ雲寄せて固まり秋空を覆いつくして夜は始まる

夕暮れにバイオリンの音洩れ聞こゆ飛ぶか飛ばぬか屋根の烏は

枯れ田よりひょいと飛び出す小さき猫見合う一瞬黒犬の負け

藁の散る稲の切り株続く田にあの稲小積みあればいいのに


     【肥前佐賀、幼き日の思い出】

稲小積み並ぶ田んぼにカチガラス長崎行きの汽車が近づく

稲小積みもたれてよける北風にかざしてかじるパラソルチョコを

     白萩 の詠める

夜四つにステーキを焼くにおいせり 階下の住人いかなる人か

芸をする眼を赤くした海獣ら 飼われるというかなしみ見たり

山奥へ分け入るほどに紅葉(もみじ)する霜月はじめドライブの道

「お母さん似ね」と言われて子を見れば鏡で見るよな表情(かお)をしており

この秋は帽子でおしゃれさせようか 今日は林檎の帽子でキメよう

     (母はスタイリスト)

モタモタと笏を収める旦那ハン 頭フリフリもの言う嫁ハン

     (れーわ天丼夫婦)


秋うらら 御声の深き響きありて日嗣の皇子は立ちたまひけり

     (皇太弟殿下)

宝冠の金剛石にもいやまして耀ふあてなる人の御姿

     (皇太弟妃殿下)


君が父になりはじめての誕生日 ベビーカー押しケーキ買いに行く   (夫の誕生日に)

訪れしはじめは涼しき秋なれど別れのいまはかくも温けり

     かりそめ の詠める

    〈わが街〉

*わが街に凱旋門のなきゆゑに マロニエ通りは駅へと向かふ

*やうやつとセルフレジにも慣れにけり柿は四個と指にて押せり

*留守がちの交番なれど窓ガラス常に磨かれ机に黄菊

*すれ違ふ人々いまを生きてをり おそらく二度と遭ふことなくも

*けふもまた道を一筋行き過ぎし何考えるとにはあらねど

*柿買つて封筒買つて帰りきて夕飯作りけふを終へたり

     〈無造作に〉

*読みさしの本忽然と消えにけり こんな狭きに器用に落ちて

*長病みのてのひら色に八つ手咲く露かと紛ふ蜜を湛へて

*無造作に積み重ねたる波除の三角形の空気のオブジェ

*来し方を好みの色に塗り替へむ失恋せしはそのままにして

*まつすぐに歩く訓練 直線をはづさぬことがかく難(かた)しとは

*真夏には子ども溢れし水場にてからころからと枯葉ころがる

*耳慣れて意味はわからぬ異国語の大きな声が窓下よぎる

*居抜きてふ歯科医院にもあるらしきいつしか名のみ変はつてをりぬ

     〈こんな日々も〉

*数日を留守せし母の枕辺にわれ呼ぶ声が記憶の初め

*天井の木目と玻璃の吸呑みと幼くて病むわれのともだち

*先生の往診鞄の底広し注射が怖いお尻が寒い

     おてもやん の詠める

○茶屋跡の庭の紅葉に包まれてひとり野点を味わってをり

     まめはな の詠める

・白き風と光と共に来し秋は笑う代わりに栗弾けさす

     (笑み栗を見て)

・ことこととバスに揺られてゆくリズム風呂吹き大根煮えそうなリズム

・くるくると身を剥かれゆく沈黙の林檎の芯は子を孕みおり

・薄青い空を四角く切り取りて銀色の猫縫い閉じにけり

・太陽に焦がされうつむくパラボラの声聞きたくて忍んでゆく夜

     (枯れたひまわりの声を聞けそうな気がして)

     honyanko の詠める

・ 看護師のあたたかき手に励まされ人間ドッグの胃カメラ終える
  
・ うたた寝し寒さで起きるその度に母亡きことを改め思う

・ 全集中掛け声かけて看護師は小学生の採血すます

     黒猫アビ の詠める

 ・痛みとの我慢くらべの日が続く
  老いたせいだとわかるがつらく

 ・老い認め誰もが通る道なれど
  自分らしさを生きればいいと

 ・ご飯好き土鍋でご飯炊くという
  息子の嫁がなぜか愛しく

 ・孫と読む「鬼滅の刃」大人買い
  二人で語るいちおし楽し

 ・あたたかな人の心にふれたとき
  我の心もあたたかくなる

     KUON の詠める

・ポケットに封切りしままのひと箱の煙草を遺し父は逝きたり

・背負はれて着きし深夜の病室のただ白かりしそれのみの記憶

・裏庭に焚き木を割りてをりたるをその三日後にみまかりし父

・肥大せし脾臓の爆ぜて四十一歳五つのわれを置きて死にしよ

・父の葬りをよくは覚えず遠くより泣きゐる母を見送りしのみ

・ひとの手を転々として泣かざりきわれが求むる父をらざりて

・久に行きし幼稚園の先生われを抱きて髪撫でくれぬ温きもろ手に

・十一月十六日さういへば記憶はるけき父の命日 

・汽車ぽっぽをわれに見せむと遠出せし父よほどなく病みて死にたり

     おおやま よしの の詠める

カナリアは うたをわすれて しまったの
誰か出してよ 銀の小舟を

なあんにも 考えたくない 今はただ
あおーい空を 見ていたいだけ

ぽっかりと ぽっかりと穴 あいている
何かで満ちる日は来るかなぁ

高らかに 誇らかに歌 詠みたかった
過去形で書く 悲しい心

もうすぐだ ニャンモナイトが 見れる日は
雪虫が飛び 冬は近づく

     ギボウシ の詠める

     (亡友を偲び)

眩さと清けさ寄せる砂浜で 相撲とったね 去年のこの日

もっと押せ まだまだ行ける 土俵際 君の底力(ちから)をしかと受け止め

     玉兎と茜馬 の詠める

三冠馬揃うその日がラストラン
寂しさはなく胸は高鳴る

     わすれんぼ の詠める

四次元の入り口あるや我が家は よく物たちが姿を隠す

テラスより眺める海は地中海 カシニョールの額見つかりぬ
 
バーチャルな旅これほどに充実す ならばと行かむ楽ちんな旅

ダフネ追うアポロンはいと美形なり 若さはかくも美しきかな

     (ボルゲーゼ美術館 ベルニーニ作)

アポロンを拒むダフネの気が知れず 今更なれどギリシャ神話読む


外(そと)見ればリハビリ散歩のご老人 暑さに喘げり一声かけぬ

老人の顔輝けり 初めての挨拶交わす秋の日の朝
  
――――――――――――――――――――――――――――――――
山小屋を出でて散歩の足伸ばし つい頂上へひとり向かいぬ

戻り来て見れば仁王立ちのひと複雑顔で我を待ちおり              
  
     パール の詠める

☆柔らかき光満ちたる並木路の落ち葉の中にポイ捨てマスク
   
     【ロンドン・ナショナル・ギャラリー展】

☆全集中独りの世界に入り込む音声ナビの優しき声よ

☆milkyway天の川にと成りし絵に母胎の神秘今も感じる

     (天の川の起源)

☆麗しき微笑む顔の眼の奥にマクベス夫人の狂気が視える

     (シドンズ夫人)

☆「ひまわり」は天を仰がず陽も浴びず深き黄色(おうしょく)魅入られ無言

☆密なれど音せず声なく穏やかに過ぎし時間は宝になりて


★誰ひとり民の事など考えぬ終われよれーわ令和で終われ




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