野望もまだある
夏の終わりにバゲットを齧っていて突然、歯が折れた。ドンクのビゴさんの訃報を聞いて数日後、たまたま通りかかったのでバゲットを買い、家でハムとレタスをがっさりはさんで、美味しいなあと喜んで食べていた矢先だった。
は?。 何が起きた? 右の上の糸切り歯・・犬歯が、グギっと上向いてしまったような衝撃。
無理やり予約を入れてもらって、通りすがりに見ていた歯医者へ飛んで行ったら、
「折れてますね、虫歯になっていたところから、ボキっと」
治療の後、折れた歯を持って帰るかと聞かれたが、イイエ、と答えた。
現在の住まいには、長年食を共にして来た犬歯を、葬ってやるべき一すくいの土も無い。
以後、他の手入れもこの際、と考えて歯科医通いを続けている。
11月初めに、今度は下の左の犬歯の隣の歯が折れた(折れたと思った)。骨付きの肉をかぶっていた時だった。
かぶせていた歯が、割れて、欠けた。欠けたから舌に引っかかって痛い。名古屋行きを控えていたし、名古屋のエビフリャアや味噌カツを食べられないのは辛い。歯科の先生に泣きついて、痛くないようにとりあえず、してもらった。
骨が折れたり歯が折れたり、気持ちは若いがカラダはそれなりにダメージを受けやすくなっているのだな。
今日も歯医者へ行って来た。左下の欠けた歯を、どうしたいですかと医師が聞く。白いのがいいです、笑うと見えるところだもん。言うと、セラミックだと10万円、と仰る。実は、あまりリアルにここに書きたくない歯科事情がありまして・・入れ歯の話なんか細かく書きたくないものね・・あれこれ工事が必要、その一本に、10万円は、支払い難い。
で、白くてそんなに高くない歯を、保険でしてもらうことになった。やれやれ。
奈良で長くかかっていたジイちゃん先生は、生涯一歯科医という感じの立派な先生だった。仕出しの昼食を注文しておられたが、何人かの衛生士さん他の方々より、200円足すから内容を豊かにして欲しいと頼んで。一番大きく品数豊富な弁当を食べておられた。八十歳は超えておられたと思う。ある日、電話がかかって、次の予約は無しにして下さい、と。先生が倒れられて入院、ご家族はこれを機に、医院を閉じようと決められたそうで、と、長年お世話になった受付の女性からの電話だった。
お見舞いも叶わなかった、それからほどなく私にも、家移りを決断することが起きて、それきりになって。少し落ち着いてから見に行った医院は、取り壊されて更地になっていた、それだけしかわからない。あえて判ろうとしないことにした。感謝だけしていよう、と。
・・・左手首は、使えるように使い続けて、パソコンも打ち続けて来たが、なんとか元通りの感じになってくれた。ダンっと手を突いたり力を入れたり重いものを持つのは避けながら、暮らしている。慣れた。
歯は、あれこれしてもらって、何とかなるだろう。骨付きの肉をギャートルズみたいにかじるなどは、控えた方がいいのかもしれないな、とは考える。甘い柔らかいパンより、塩分の絶妙なハードなタイプのパンが好きだが、バゲットは,こころして食べるべきなのか。
若い頃から歯は丈夫で、雑に使って来た気がする。
骨は年齢並みになっているということか。いや。あの台風の風は異常だった。
歯は・・今は、すごい技術でもって、なんとかしてくれる・・今年中に全部、きれいになるみたい・・。
多少は気を遣って大切に思いながら、できたらいつか、今度は、X ジャパンのステージを観に行きたいなあ、と、野望を抱いている。
まさこだのコムロだのの件については。まっとうな、アレらにふさわしい終焉の訪れるように、との、野望でなく、熱望を抱いている。